「セキュリティ対策は電子カルテの話で、予約システムは関係ない」——そう考えているクリニックは少なくありません。
しかし、患者情報を扱い院内ネットワークにつながる診療予約システムも、医療情報セキュリティの観点では無関係ではいられません。
本ページでは、診療予約システムがセキュリティガイドラインとどう関わるのか、2027年度に向けて話題となっている「二要素認証」の正確な意味、そして受付や診察の流れを止めずにセキュリティを高める運用の考え方、要件に配慮したシステムの選び方までを、予約システムの目線で分かりやすく解説します。
診療予約システムには、氏名や連絡先だけでなく、受診理由やWeb問診の回答、受診歴といった情報が集まります。
これらは患者の健康・病歴に関わる情報であり、個人情報保護法上、特に慎重な取り扱いが求められる「要配慮個人情報」に直結するため、予約システムだからといって対策の枠外に置いてよいわけではありません。
厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」は、電子カルテだけを対象にしたものではありません。
セキュリティ対策を検討する際は、電子カルテ・レセコンに加え、予約システムやWeb問診ツールなど、患者データを扱いネットワークに接続する仕組みを一通り洗い出すことが出発点になります。予約システムも、この棚卸しの対象に含めて考えるのが基本です。
クラウド型の予約システムでは、セキュリティの責任を自院とサービス提供事業者のどちらがどこまで負うのかを、あらかじめ整理しておく必要があります。
万一の情報流出時に患者への説明責任を負うのは医療機関側であるため、障害時や漏えい時の責任範囲、データの保管場所やバックアップ体制をベンダーと事前に確認しておくことが欠かせません。クラウドとオンプレミスの違いはこちらのページもあわせてご確認ください。
厚生労働省のガイドライン(システム運用編)では、利用者認証について二要素認証への対応が示されています。
ポイントは、これが「ある日を境に一律で義務化される」という性質のものではなく、2027年度(令和9年度)時点で稼働していることが想定される医療情報システムを新規に導入・更新する場合に、原則として二要素認証を採用するシステムの導入、またはこれに相当する対応を行うという考え方で整理されている点です。あわせて、対応が難しい場合には次期のシステム改修時に対応することを許容する経過的な取り扱いも示されています。既存の仕組みをすぐ全廃せよという話ではなく、導入・更新のタイミングで備えていく方向性と理解しておくとよいでしょう。
二要素認証とは、「知識(パスワード)」「所持(ICカード・スマートフォンなど)」「生体(指紋・顔など)」という性質の異なる要素を組み合わせて本人確認を行う方式です。
仮にパスワードが漏れても、ICカードや生体情報がなければログインできないため、ID・パスワードだけの認証に比べ、なりすましや不正アクセスのリスクを大きく下げられるのが特徴です。
ガイドラインは継続的に見直されており、2023年5月に第6.0版が公表された後、2026年には第7.0版へと改定されています。
第7.0版では、二要素認証の対象として端末やサーバといった範囲が具体化されたほか、対応が難しい医療機関に配慮した経過的な取り扱い、外部委託先の管理に関する編の新設などが盛り込まれています。最新の版・要件は厚生労働省の公表資料で確認することをおすすめします(参照:厚生労働省の関連ページ)。
ガイドライン自体に「対応しなければ罰金がいくら」といった直接の罰則が定められているわけではありません。
ただし、対策を怠った結果として情報漏えいが発生した場合、個人情報保護法上の安全管理措置に関する義務との関係で、行政上の対応や責任を問われる可能性がある点は軽視できません。加えて、ランサムウェア被害による診療停止など、経営そのものに直結するリスクへの備えという意味合いも大きいといえます。
スタッフが交代で使う受付端末では、毎回パスワードを長々と入力する運用は現実的ではありません。
こうした場面では、ICカードをかざしてPINコードを入力するだけでログインできる方式にすると、セキュリティを保ちながら操作の手間を最小限に抑えられるため、共有端末との相性がよい組み合わせの一例です。
診察の合間に何度もログインし直す医師の端末では、素早く認証を済ませられる仕組みが求められます。
マスクの着用状況にも配慮した顔認証などの生体認証を組み合わせれば、診察のテンポを崩さずに本人確認を行えるため、診察室の運用に向いた選択肢のひとつとして検討できます。
予約システムの管理画面へのログインには、専用のハードウェアを追加せずに始めやすいワンタイムパスコード(その都度発行される使い捨てのコード)方式が使いやすい選択肢です。
追加機器の導入コストを抑えつつ、管理画面へのアクセスに二要素認証を組み込めるため、まず着手しやすい方法として挙げられます。どの方式が自院の動線に合うかは、システムごとの対応状況を確認して選ぶことが大切です。
医療情報を外部で預かるクラウドサービスでは、プライバシーマークやISMS(ISO27001)、保健医療福祉分野のプライバシーマーク制度(MEDIS)といった第三者認証の取得状況が、安全管理体制を客観的に見極める材料になります。
「3省2ガイドラインに準拠しているか」「医療情報セキュリティに関する開示書類に対応しているか」もあわせて確認しておきたいポイントです。
「誰が・いつ・どの患者の予約情報や問診内容にアクセス・変更したか」を記録し、後から確認できることは、内部不正の抑止や、万一の際の状況把握のために重要です。
アクセスログや操作履歴を記録・保存できる機能を備えているかを、選定時のチェック項目に加えておきましょう。
サイバー攻撃や通信障害で受付が混乱する事態に備え、事業継続計画(BCP)やデータのバックアップ体制も確認しておきたい点です。
定期的なバックアップの有無や、障害発生時の代替受付の手順まで見ておくと、いざというときの外来停止リスクを抑えられます。自院の課題に合ったシステムの選び方は診療予約システムの選び方もご覧ください。
最初に、院内で稼働しているシステムを一覧化し、患者データを扱うものを洗い出します。
電子カルテだけでなく、予約システムやWeb問診ツールも含めて、それぞれの認証方式が現状どうなっているかを確認するところから始めましょう。
現在利用している予約システムが二要素認証に対応しているか、今後の対応予定があるかを、提供事業者に直接確認します。
「ガイドラインへの対応方針はあるか」を問い合わせておくと、対応の見通しが立てやすくなります。
現行システムが要件に対応できず、今後の対応予定もない場合は、要件に配慮したシステムへの乗り換えも選択肢になります。
セキュリティ面と日々の使いやすさの両面から比較検討することが、失敗しない見直しのポイントです。乗り換えの具体的な手順は診療予約システムの乗り換えで詳しく解説しています。
診療予約システムは、患者様の利便性向上と医院の業務効率化を同時に叶える強力なツールです。
ここでは数あるシステムの中から、自院に合ったものを選べるよう、ニーズ別に厳選した3システムをご紹介します。